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そばやのおはぎ

食に対するこだわりや執着がさほど無く、グルマンとは無縁な人生を送っているのではありますが、そんな自分でも加齢とともに味覚が変わるといったことを自覚する昨今。昔、好まなかった料理や食材がこの年齢になって旨いと感じることも多々あります。年を重ねると胃腸の働きも鈍くなり、脂っこいものは受け付けなくなると言いますが、まったくもってそのとおりで自分はやっと粗食に相応な容れ物と相成りました。最小限のエネルギーで結構暮らせる。盛夏の折、揚げもん辛いもん食って気勢を上げてる若者を横目に、淡白な豆腐やら冷たい蕎麦なんかを好んで取り澄ます、あれからのこのごろです。

蕎麦といえば、元来無粋な性分で、「ざる」や「もり」なんていう、プレインな麺を黒いおつゆに浸して啜るだけの、色感乏しく味の展開が単調なものは退屈で味気ないと、若い時分は能動的に食うことはほぼなかったんです。関東に居た頃は小田急沿線沿いに暮らしており、立ち食いの「箱根そば」なぞ好んで通っていましたが、それもほとんどが温かいそばで、実際、安価にカロリーを摂取できて、後腐れのない素早さが魅力だったわけで。つまりほとんど、蕎麦の上に載った天ぷらやコロッケ(!)などのオカズが目当てであって、そばの味もなにも関係ない乱暴な嗜好でした。

それがいまや、前述のように、なんの変哲も無いつるつるの蕎麦をアテに冷酒を飲んで、しみじみと喉を鳴らす、乾いたジジイに成り果てました。それでもまだまだ半可通で、実際は蕎麦の味の違いなんてのはほとんど分かっていない。コンビニで売ってる蕎麦だって別に嫌いじゃない。今はほぐし水なんてのも開発されるほど進歩したことだし。はっきり言って蕎麦と素麺の違いがわかる程度のレベルじゃないかな、俺は。そういや揖保の糸なんていうお中元の定番もかつては「もらって迷惑リスト」と軽んじていたのですが、この素麺の頼りない喉ごしも今じゃ風情があって好ましいなあと感ずる。

他に嗜好が変わったといえば甘いものです。甘いものは全般苦手だったんですが40の声を聞くあたりからなんとなく餡子が好きになりました。特に好んでいるのが「おはぎ」。幼少の頃、祖母が作ってくれる手作りおはぎを母がうまそうに食べてるのを見て、不思議に感じていたのですが、あの素朴な味わいが今や恋しい。実はおはぎって時期を外すとなかなか売ってないんです。去年の暮れに、お使い物にいいかなと思って、市内の和菓子屋各所に問い合わせてみたのですが、この時期におはぎなんか作ってないと一笑に付される始末。おはぎはお彼岸にこしらえるものなのですな。ところがつい先日、炎天燃えるような暑さの土曜日、それこそ近所の蕎麦屋で「もり」を食っていたところ、店内のポップに「おはぎお持ち帰り1個150円」の案内が。会計時に数個求めて、家で喰ったらこれが実に旨い。その日、函館は旧盆、すなわち彼岸だので、おはぎを推していたのだろうと推測したのですが、後日訪れるとまだ売ってる。尋ねてみると、彼岸に関係なく年中販売しているという思いがけない回答。これには興奮しましたね。何を隠そう函館市内では有名な産業道路沿いの「ふでむら」っていう蕎麦屋さんなんですが・・・。蕎麦自体はまあなんというか庶民的なお味で。おはぎは俵型で甘すぎず、しっとりとした餡の色気が上品な逸品です。和菓子店で通年食えないおはぎをそば屋のテイクアウトメニューに発見するとは、まさに棚からぼたもちってとこでしょうか。

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