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横穴のムジナ

福島県南相馬市の小さな町でアート展「オダカート2019」が始まっています。福島在住の鉄の彫刻家・首藤氏の呼びかけで、私を含め東北北海道の作家4人が集いました。2016年に避難解除された小高地区の元教材倉庫が会場です。これまで福島に縁のなかった自分は2011年の原発事故の影響で小高区がどのように変化したかは想像するしか無いのですが、傍目には少しずつ復興が進んでいるように窺えました。今回の展覧会も実はそのあたりがテーマで「生活とアート」をメインタイトルとしています。小高という町への思い入れは、作家4人それぞれ温度差はあるでしょうが、各自がそれぞれの故郷に置き換えるなどして、テーマについて考えをめぐらせたのではないかと。

自分は小高にまだ数回訪れただけですが、東北らしい素朴な町の佇まいは日本古来の文化と思想が豊かな自然とともにに息づいているような印象がありました。会場の下見を兼ねて計画した旅は台風19号の影響など、もろもろの事由で延期を重ねました。やっとの思いで実現した初めての小高ツアーではかねてから念願の「横穴」を見ることができました(オダカートのロゴのモチーフでもあります)。インターネットで検索してもあまり出てこず、首藤氏の熱い語りでしか想像しえなかった古代の遺構群。小高住民にとっては特筆するまでもない日常の一部ということなんですが、北国から来たよそものにとってはずいぶん希少な風景として映りました。横穴とは国道沿いの山の斜面や、田畠の裏山の中腹などにぽっかりと空いている、さほど奥行きのない洞窟です。明らかに人工的に掘られたもので、古人が死者を弔った古墳のようでもあり、ちょっとした住処のようでもあり、用途ははっきりわからないそうですが、いずれにしてもどこか異界への入り口を思わせる蠱惑的なオーラを発していました。首藤氏のすすめで、横穴のひとつに侵入してみたのですが、あたかも結界に足を踏み入れてしまったような畏れと、胎内に回帰するような懐かしさが同時に沸き起こる奇妙な恍惚感で。穴の中から見下ろす風景もまた、自ら計り知れない深い記憶に触れるようなデジャヴュ感があり、なんとも不思議な体験でした。このほか、「磨崖仏」など、これまた山の斜面を利用して掘られた巨大な仏像など民間信仰の気配を感じさせる荘厳な遺跡も見ることができました。

肝心の展示についてですが、異なるジャンルの4人がそれぞれの持ち味を発揮した、テンション高めの展覧会になったと思います。会場は大きな物品倉庫を有するかなり特殊な造りなのですが、ほとんどリノベーションともいえる改装の末、素敵にハイブリッドなギャラリー空間となっています。(これも首藤さんが数ヶ月かけて準備したのですが)。作品の設営は2日間かけてじっくりとこだわりながら行いました。あまり展示作業に慣れていない自分にとってはずいぶん勉強になり、神経も股関節の筋肉もたっぷり使いましたが、出来上がった時は心地よい疲労感がありました。23日には木戸氏、横山氏によるワークショップもあります(要事前申し込み)。お近くの方はぜひお立ち寄り下さい。

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